コラム


税務・会計・その他経営に関する事項を不定期に投稿。
コラムのトップページへ

クラウド会計ソフトのメリットとは

クラウド会計ソフトって何がいいの?

『最近、会計ソフトでも「クラウド型」の会計ソフトが流行っているみたい。』
そんな話を聞いたことがある方は多いかと思います。でも、実際ウチの会社に導入してなにかいいことあるの?ただ単に、なんとなく流行っているだけじゃないの?
いえいえ、経営について日々あれこれ考えている経営者の方の事業にこそ導入してもらいたいクラウド会計ソフト。
今回はそのメリットについて見てみようと思います。

クラウド会計ソフトの実際

クラウド会計ソフトと呼ばれるモノの中で現在特に有名なものといえば「freee」と「Money Forward(以下MF)」。今回はこの2つにフォーカスを当ててみます。
この2つが会計ソフトとして画期的であるのは、「データをデータのまま帳簿に流し込む機能」です。
なんのこっちゃ?という感じかもしれませんので、実際の画面ショットを見てみましょう。

【freeeの画面】
実際にfreeeで記帳する際の画面ショットを抜いてみました。
私が普段使用しているモバイルsuicaに2,000円チャージした時の履歴です。簿記を知っている方向けに言うと「旅費交通費 / 未払金」の仕訳です。
(本当はチャージ段階で旅費交通費にはできないので決算時に整理する必要があるのですが、本旨ではないのでここでは割愛します。)

この画面のうち、「口座名・取引内容」の記載をよく見てください。「Suica[携帯決済] 東京都 渋谷区」とあります。 この記載、モバイルsuicaを使ったことのある方であれば、どこかで見たことありませんか?
そう、この摘要欄はクレジットカード会社のweb明細そのままの内容なのです。つまり、あらかじめ登録しておいたクレジットカードのweb明細からfreeeに自動で情報が流れ込むようになっているのです。 同様の理屈で、金額の2,000円も明細からfreeeに流れ込むようになっています。

ということで、クレジットカードを通して支払ったものについては自動連携によって全て・漏れなく会計システムに取り込むことができるようになります。 決済を事業用のクレジットカードにまとめれば、もう「あの日どこの店でいくら使ったっけ?」などと領収書を漁る必要はありませんし、改めて領収書を見なくても、金額含めて自動でデータ化してくれるのです。

留意ポイントとしては、この画面右側の「登録内容」の部分です。
ここの部分は「口座名・取引内容」をもとに、freee側が推測で入力してくれます。今回は「Suica」といったワードがあるので「旅費交通費」と一発で推測してくれるわけですが、 良く分からない内容だと、はじめは間違った推測が入ります(たとえば「水道光熱費」を指定してきます)。

でもご安心ください。この推測内容は「学習」させることができるので、2度目以降は一発で正確な情報が推測入力されます。 「学習」は主に摘要欄の情報などから行うので、定型的な取引については、一度覚えさせると後は勝手に推測して入力してくれるわけです。
逆に言うと、最初の「学習」が間違っていると、間違った内容で延々データを垂れ流すことになります。導入初期ほど、税理士などにしっかりと整理してもらうことで軌道にのせやすくなります。

考えてみていただきたいのですが、事業の中で起きる日々の取引のうち、半分以上はパターン化できる定型的な取引ではないでしょうか?
家賃、水道光熱費、電話代など…… しっかり「学習」させることで、記帳は登録ボタンを押すだけになります。この仕組はMFでも概ね同様です。

ちなみにfreeeだけの限定機能になるのですが、ギリギリまで作業工数を減らすのであれば、登録ボタンを押すことすら必要ありません。
freeeの学習機能には、「条件と一致したら(登録ボタン押し無しで)自動的に登録」という機能があるので、取引の様々なパターンを網羅すれば、後は勝手にfreee側で自動記帳してくれることになります。(freeeの特許のようです)

また、上記はクレジットカードのweb明細連携の例でしたが、連携先はクレジットカードのweb明細だけではありません。
例えば、銀行のネットバンキング明細も連携させることができるので、口座引き落としの費用も「学習」させて自動入力化できます。また入金サイドも連携されるので、売掛金の消込処理時にも活用することができます。

さらに、外部のアプリ(freee、MFで対応アプリが異なります)との連携も可能になっており、これらをうまく組み合わせれば会計ソフト側での入力作業を極限まで減らすことができます。

キモはデータの取り扱いと業務フロー

このように、会計ソフト(経理処理)は全自動化による省力化が図れるようになってきているのですが、逆に言うと会計ソフトだけクラウド会計ソフトを導入しても、即フル活用とはならないという点に注意が必要です。

例えば先ほどの例、モバイルsuicaを使わず、クレジットカード決済も使わず、全て現金で決済していて、ネットバンキングにも登録していない……
このような状況では、クラウド会計ソフトをフル活用することは難しいのです。クラウド会計ソフトをフル活用するには、現場の業務フローをこれらの機能に整合させる必要があります。
いいかえると、既にデータ化が終わっているものは、データのまま会計ソフトまで流し込むような業務フローを作れるかがキモになります。

例えば、freee・MFともに、飲食店でよく使われているPOSレジアプリ「Airレジ」との連携も可能になっているので、Airレジに記録された売上データをアプリ連携でクラウド会計ソフトに自動で反映させる、であったりとか、 freee・MFともに請求書作成アプリがあるので、そちらで作成した請求書のデータがアプリ連携でクラウド会計ソフトに飛んで、売上として自動計上される、など。 給与計算ソフトで計算された給与金額を、経費として会計ソフトに自動反映するなどもできます。 アプリ同士の連携を駆使して、データ入力を一度で済ます、というのが最終ゴールになります。

エクセルで請求書を作って紙に印刷し、印刷された請求書を見ながら会計ソフトにまた同じ情報を入力して、という作業はもう終わりにしましょう!

おわりに

クラウド会計ソフト、なんか便利そうだなという実感が少しでも湧いてきましたでしょうか?
「データ化が終わっているものは、データのまま会計ソフトまで流し込む」ための理想の手順については、それぞれの会社・事業の状況によります。
特に大きな会社・事業者ですと、既存の業務フローをすぐに変えるのが難しいケースもあると思いますので、そこは設計担当者が、どこまで変えるかのレベル感を工夫します。 (当事務所でも顧問先の会社様・事業者様についてこちらの設計作業をお請けしています。)

経営者の方のアイデア次第で、バックオフィス業務はかなりの省力化が可能となります。きれいな「データの流れ」を作ってあげて、業務の効率化を目指してみませんか?


田崎会計事務所(田崎公認会計士・税理士事務所)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-12-7 ストーク新宿1階 B-16