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青色申告と白色申告

青色申告・白色申告は結局何が違うのか?

よく、開業に際してのアドバイスをする本や解説サイトで「開業したらすぐに青色申告の届けを出しましょう」といわれますが、結局何がどうお得なのかは良く分からない、そんな方も多いのではないでしょうか。
届出なんて面倒くさいし、出したくないんだけど…… という方もいらっしゃるかもしれませんが、「面倒くさい」で手放すには惜しいメリットがいっぱいある青色申告。 今回はその内容を改めて確認してみましょう。

白色申告は青色申告じゃないものを指す

「白色申告」は一言でいうと「青色申告」を適用していない申告書のことを指しています。特別ルールが適用される方が「青色申告」というので、それと対比するといったレベルの話です。 (俗称とでも言えばよいでしょうか。)ですので、「青色申告」のメリット・デメリットを反対にしたものが「白色申告」のメリット・デメリットになるという理解で問題ありません。
そして、「青色申告」のメリットが大きすぎるので、青色申告を適用しない理由がほぼ見つからない、というのが率直な感想になります。

青色申告の中身は?

青色申告については、法人の場合と個人の場合それぞれについてルールが定められており、条件を満たすことで、法人の場合は法人税、個人の場合は所得税、の計算上、優遇措置を受けることができるようになります。
適用に当たっての作業自体は、「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出すること、たった一つのみです。ただし、申請書を提出した後に一定のルールを守る必要があります。 この守るべきルールについては以下の通りです。

・「青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する

これは先ほど記載した通りですが、青色申告承認申請書には提出期限があります。法人と個人事業主の場合で期限が異なっており、
・法人:適用を開始する事業年度の開始の日の前日まで
・個人事業主:事業を開始しようとする年の3月15日まで
となっています。一度提出した後は取り消し処分などを受けない限り継続して適用できます。
税理士の関与が年1回、決算や確定申告のみの方は、きちんと提出されているかについて留意が必要です。(提出されていないことが後日税務調査などで発覚した場合、 青色申告特別控除などの取り消しを受け、税金納付を求められる可能性がありますので、届出には十分注意しましょう。また、届出の控えもきちんと保管しておきましょう。)

なお、上の条件は新規開業の方以外の基準です。(10月に開業してその年は青色申告できない、というのもおかしな話ですので。)新規開業の場合、
・法人:設立後3か月を経過した日または設立事業年度終了の日のいずれか早い日の前日
・個人事業主:事業を開始の日から2か月以内(ただし、1月1日から1月15日までに開始の場合は3月15日で変わらず)
になります。きちんと出したかどうかの管理も面倒ですので、開業と同時に届け出るのが手っ取り早いと思います。

・正規の簿記の原則により記帳する

正規の簿記と聞くと「何が正規なんだ?」となりそうですが、通常、複式簿記のことと解されています。要は、一般的に「簿記」とイメージされている手法で記録をつけてください、という話です。
一般的な会計ソフトを使って作業し書類を残せばこの条件は満たされる、と考えて問題ありません。

・帳簿を備え付ける

これも仰々しい用語ですが、要は後から確認できるよう、しっかり記録を残しておいてくださいというイメージでOKです。 会計ソフトのデータを保存しておけば足りますし、実務上の便益から考えても、通常、これらのデータは保存しておきます。

(個人事業主)確定申告時に貸借対照表と損益計算書を添付すること

これは提出書類の問題ですが、確定申告時には貸借対照表と損益計算書を添付します。この書類も、一般的な会計ソフトであれば出力する機能を備えてあるので、 会計ソフトを使って記録しておけば自動的に条件は満たされます。

メリットについては?

青色申告のメリットについても見ておきましょう。これも法人と個人で若干異なりますが、総じて効果的に税金負担を減らすものになっています。先に個人事業主のメリットを紹介し、最後に法人についても確認します。

・青色申告特別控除

まず一番大きいのがコレです。税金計算上、事業のもうけから最大65万円を減額することができます。所得税率20%であれば13万円減少です。住民税にも適用されるのでそちらは約7万円減少です。 (全部使い切れば、所得税住民税で約20万円減額です。)
注意点としては、「事業所得」と「不動産所得」のもうけからしか減らせないので、「給与所得」や「雑所得」などと相殺することはできません。 副業収入は大抵の場合、雑所得になるので、青色申告特別控除の対象外です。
(本論とは関係ないので詳細は省きますが、副業は大抵の場合、雑所得と判定されます。税務署に「開業届」を提出していたとしても、「開業届を出した=即、事業所得」とはならないので注意してください。 このあたり誤った認識も結構広がっていますが……)

・赤字の繰越

こちらも大きい、赤字の繰越制度。事業を立ち上げたばかりの場合、当期に発生した損失を3年後まで繰越できます。繰り越した赤字は、翌年度以降、黒字の年度の利益と相殺することができます。

・少額減価償却資産の特例

通常10万円以上の固定資産を購入した場合、減価償却が必要になりますが、青色申告者は30万円未満のものについては一括で経費計上することができます。(ただし、中小事業者の場合のみ。1年で300万円まで。)
減価償却費の計上を待つ必要がないので、思わず利益が出てしまったときには一括で費用計上して税金負担を下げることができます。

・青色専従者給与

事業者の親族が事業者の経営する事業で働いている場合に、給与を支払うと全額経費として認められる制度です。(逆に言うと、青色事業者でないと全額経費計上が認められません。)
ただし、届出を出せばいくらでも給与として渡していい、という話ではなく、きちんと事業に従事しており、相応の給与であることが条件です。
当然、税務調査などでは細かく見られるので、従事実体のない給与支給はやめましょう。

法人の場合は?

法人についても似たような感じで税務メリットが色々得られます。所得税ではないので青色申告特別控除はないですが、赤字の繰越は3→10年まで期限が伸びますし、少額減価償却資産の特例もあります。 また法人の場合は、国の政策上、各種の法人税額控除が特例として設けられることが良くありますが、それらを受ける前提として青色申告が求められるケースがあります。

届出を出しておけば、大体の場合条件を満たす

前半の話に戻りますが、会計ソフトを使って経理作業をやりつつ書類を整理するという作業は、大抵の事業者であれば実施されていると思いますので、 届出さえきちんと出してしまえばほぼ適用条件を満たします。 特に税理士に経理や申告書の作成を依頼している事業者であれば間違いなく適用対象になれるので、このルールを適用しない理由が見当たらないといっても過言ではありません。 まだ届出を出されていない事業者の方はきちんと提出しておきましょう。

個人事業主の場合の要注意ポイント

最後に、個人事業主(所得税)の「青色申告特別控除」について、最大65万円というのが独り歩きしていますが、正確には以下のいずれかを満たす場合に65万円の控除ですので注意してください。

(国税庁HPより一部抜粋+加工)
イ その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存とその届出を行っていること。
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

まとめると、①会計データを電子的に保存しつつその届出を出している、②確定申告をe-taxで行っている、のいずれかでないと65万円の控除要件を満たさないということになります。 ①の届出を出していない事業者が確定申告書を紙で提出したら65万円控除ではなく55万円控除になるので、申告の際は留意してください。


田崎会計事務所(田崎公認会計士・税理士事務所)
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