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クラウド会計ソフトfreeeの特徴

freeeって何ができるの?

別のコラムで書いた通り、最近流行りの「クラウド会計ソフト」を活用するためには、経理以外の業務フローを含めた業務改善が欠かせません。
ご参考→「クラウド会計ソフトのメリットとは」

そんな中、クラウド会計ソフト活用のポイントは分かったけど、「具体的に何ができて、どう改善すれば良いの?」と考える方も多いかと思います。
そこで今回は、クラウド会計ソフトのツートップともいえる、freeeとMoney Forwardの特徴と活用方法を具体的に見ていきましょう。
まずはfreee編です。

革新的なプロダクト

freeeは従来のソフト型会計ソフトと異なり、クラウドや他アプリのデータ連携を活用した記帳作業を可能にしました。
彼らのモットーである「スモールビジネスを、世界の主役に。」は、freeeというプロダクトを通じて非効率なバックオフィス業務をなくし、 ビジネスそのものに注力できる環境作りに貢献したい、という決意の表れでしょう。

ビジネスの発展にバックオフィス側から貢献する、ということを意識しているfreeeは、従来型のソフトとは大きく異なるデザイン(UI)や仕組みを採用しています。 この点、革新的でもあるし、急進的であるとも言えます。

従来型の記帳を知っていると戸惑う

freeeでよく言われるのは、従来ソフトの帳簿入力方法と全く異なるという点です。実際の入力画面を見てみましょう。

【実際のfreeeの取引入力画面①】

ご覧の通り、freeeでは簿記でよく見る「借方」「貸方」の概念が存在しません。取引は「収入」なのか「支出」なのか、「未決済」なのか「決済(完了)」なのかで捉えます。 キャッシュがどうなったのか、に対して重点を置いている感じですね。
この結果、従来の会計ソフトでの入力に慣れている方にとっては相当な違和感のある仕組みとなっています。次に述べる「口座」の考え方と合わせて、 freeeが従来型に慣れている経理パーソンに受け入れづらい大きな原因となっています。

これはfreeeが簿記のルールをあまり知らない人でも直感的に入力できるよう、キャッシュの出入りに注目した結果だと考えています。
キャッシュの出入りであれば経理経験・簿記知識のない中小企業の経営者の方でも入力できる、というのがそもそもの狙いだったのだと思います。

この狙いについては功罪半々というのが個人的な感想です。単純な取引登録については簿記知識なしでも出来るというメリットがありますが、 入金消込や科目振替、決算整理作業など、結局、最終的な決算書が完成するまでのどこかで経理・簿記知識が要求される場面が出てくるので、経理・簿記知識ゼロでは正しい決算書は出来上がらないと思っています。 「簿記知識ゼロの人でも、単純な入力作業のお手伝いができる」というレベルの認識が良いかと思います。(つまり、軸としては従来と同様に、経理パーソンや税理士などの作業が必要ということ)

「口座」という概念

次に、従来の経理パーソンを戸惑わせるもう一つの概念、「口座」についても見てみましょう。
「口座」という文字を見たときに、何を想像しますか?たとえば「銀行口座」でしょうか?

【実際のfreeeの試算表表示】

上記の試算表のうち、従来型の記帳ではあまり見られない勘定科目(項目)があります。
「三井住友(契約者番号)」「DCカード」「アメリカン・エキスプレス」……これらはいったい何なのでしょうか?

実はfreeeでは、これらを「口座」という概念で呼んでいて、全て勘定科目として取り扱っています。従来型の記帳で言えば「預金」や「未払金」ですが、 freeeではそのまま表示して処理します。従来型でいう補助科目が勘定科目になったイメージです。
これも先ほどの通り、キャッシュに軸足を置いた結果このような設定になったと個人的には見ています。つまり、どこからお金が出入りするのか、を端的に表現するとこうなる、 という発想なのだと思います。 ただしこの発想もまた、従来型の記帳に慣れた方にはかなり戸惑われるかと思われます。

タグ機能が充実

ではfreeeは、単にネットバンキング等との連携があるだけの、使い勝手の悪い会計ソフトなのか?
もちろんそんなことはなく、freeeならではの大きいメリットがあります。まずはタグ機能について紹介しましょう。

【実際のfreeeの取引入力画面②】

売上高の入力画面を見てみましょう。
入力画面のうち、色付きで表示されている項目が分かりますでしょうか?「取引先」「品目・部門・メモタグ」の部分です。
これがfreeeの特徴であるタグ機能です。文字通り、その取引が「どの取引先の売上か」「どの商品の売上か」などをタグ付けすることができる機能です。 取引がタグ付けされると、試算表上でも内容をブレイクダウンすることができるようになります。例えば、以下のような感じです。

【タグ付取引のブレイクダウン】

これを見れば、各売上・費用の構成がどのようになっているかが一目瞭然です。従来型だとせいぜい取引先別で金額を集計するレベルでしたが、 freeeは複数の観点でタグを設定できるため、経営者の方の重視するポイントに沿ってきちんとタグを設定すれば、実効性のあるレポートを見ることができるようになります。 もちろん、このタグも「学習」させれば自動で付与されるようになります。

タグをうまく設定すれば、「最近はXX商品の売上が伸びているな」「思ったほど△△部門の売上が伸びていないな」といったデータを取って「数値の見える化」を簡単に実現することができます。

API連携が豊富

言うまでもなく、クラウド会計ソフトの本領である他アプリとの連携も大きなメリットの一つです。
freeeでは他アプリとの連携を積極的に進めているため、他アプリで入力した情報をfreeeに自動で流し込むことで記帳作業や債権管理を省力化することができます。
「Airレジ」や「スマレジ」の売上データを反映させる、「kintone」や「Salesforce」の取引先情報や取引情報を流し込む、などなど……

それぞれの会社・事業で使われている現状のシステムを活用したまま、バックオフィス業務の一体化を図ることができるようになります。
連携できるアプリの数が本当に多く、これからも増え続けると思いますので、連携先が気になる方は以下のfreeeアプリストアから連携状況をチェックしてみてください。

※freee公式の連携アプリ案内はこちら → 【freee アプリストア】

【ご注意】
連携関係でいうと、「楽天銀行」のネットバンキング連携が2022年2月で終了してしまいました。
残念ながら、楽天銀行をメインで使われている方がネットバンキング連携を活用するためには、Money Forward一択となりそうです。
(代替措置として、楽天銀行の明細をfreeeに手動で流し込む仕組みはありますが、手動でありリアルタイム反映ではないのでご注意ください。)

freeeが合いそうな会社・事業者とは?

最後に、冒頭の話に戻ります。
freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」をモットーに、従来の会計ソフトにとらわれないプロダクトを作り上げました。
そんな彼らの本当の狙いは「リアルタイム経営の実現」です。

つまり、「各種API連携を駆使して情報をタイムリーに吸い上」げ、「上がってきた情報は学習されたルールに基づき自動で記帳」し、 「新鮮な情報から各種タグで効果的に分析された分析結果を、リアルタイムでチェックする」ことで、経営スピードを極限まで高めることを目指しているのです。
以上のことからfreeeを、単なる「安い」「なんか良く分からなくても自動でやってくれそう」な会計ソフトというイメージで導入すると、その真価を全く発揮できないまま終わります。

導入には、タイムリーな情報の吸い上げ、リアルタイムでの記帳作業、効果的な分析を実施するためのタグ付けなどが要求されるので、例えば、
・freeeに情報を流し込みやすくするために、業務フローを大幅に変えるのもいとわない
・情報を流し込むだけではなく、正確に記帳が行われるようになるために定期的な情報メンテナンスを行える人材の確保
・有用なヒントにつなげるための経営者や業務責任者の分析アイデア
といった要素が導入に当たって求められます。

こういったポイントから、結果的には、様々な業務フローが出来上がった社歴の長い・規模の比較的大きい会社よりも、スタートアップや小規模の会社・事業者に合いそうなソフトであると思われます。 もちろん、現状よりももっと有用な情報の入手や業務フローの構築をやりたい、社歴の長い大きい会社が導入を進めるというのもアリですが、その場合は相当の覚悟を決める必要がありそうです。
またいずれの場合も、導入当初からしっかりと税理士や導入アドバイザーなどの助言を受けて、的確な業務フローの構築、正確な自動記帳ルールの設定、効果的なタグの設定などに取り組むことが不可欠でしょう。

freeeは文字通り革新的、劇薬ともいえそうなプロダクトですが、ハマれば大きな可能性を見せてくれそうです。


田崎会計事務所(田崎公認会計士・税理士事務所)
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